「お母さん、杖を買おうか?」
3年ほど前、自宅で転んで右手をつき、手首と肋骨を3本折る大けがをした80代の母に、私はそう聞きました。返ってきたのは、気乗りしない返事でした。
脚力が落ちて、ふらつくときがあるのに、です。そのうち母は、傘を杖代わりにして歩くようになりました。
同じような親御さんの姿に、心当たりはありませんか?
この記事では、杖を嫌がる母のためにモンベルの杖を選んだ体験談をお話しします。あれから3年。今では不安なときには自分から杖を手に取るようになりました。同じように「親が杖を使ってくれない」と悩んでいる方の、少しでも参考になればうれしいです。
- 選んだのは、モンベルのTグリップ アンチショック
- 嫌がる親には「選ばせない」。買って、家に置いておくのが正解でした
- 介護の道具は「必要と思ったとき、すぐそばにある」ことがいちばん大事
傘を杖代わりにする母を見て

「杖を買おうか?」と聞いても乗ってこない。でも歩くのは不安そうで、外では傘を杖のように突いている——。
見ていてヒヤヒヤしました。傘は体重を支えるための道具ではありません。先も滑りやすく、いざというとき体を預けたら、かえって危ない。
でも、母の気持ちも分かるのです。杖を持つことは「自分は杖が必要な年寄りだ」と認めること。母が乗り気にならないのは、想定内でした。
だから、作戦を変えました。母に選ばせるのをやめたのです。
なぜ介護用品店ではなくモンベルだったのか

杖と聞いてまず思い浮かぶのは、介護用品店に並んでいる杖だと思います。
でも、いかにも介護用という見た目の杖では、ますます使ってくれない気がしました。母が嫌がる理由の根っこには、年寄り扱いされたくない気持ちがあるからです。
そこで思いついたのがモンベルでした。アウトドアブランドの杖なら、杖というより「ウォーキング用のポール」。色もデザインもスポーティーで、持っていて恥ずかしくありません。
お店では、店員さんにこうお願いしました。
みなタウンで使える杖を教えてください
山歩き用ではなく、街の中で普段づかいできるもの。そう伝えると、店員さんが案内してくれたのが「Tグリップ アンチショック」でした。


Tグリップ アンチショックのレビュー
| 商品名 | モンベル Tグリップ アンチショック(#1140148) |
| 価格 | ¥7,800(税込・2026年7月現在) |
| 重さ | 223g(付属品込みで240g) |
| 長さ | 80〜100cmで調節可能 |
| 色 | ダークグレー/グリーンの2色 |
※私が購入したときは¥6,600でした。この3年で値上がりしましたが、それでも「買ってよかった」と思える理由を、ここからお話しします。
実際に持ってみて驚いたのは、とにかく軽いこと。223gは、飲みかけのペットボトルより軽いくらいです。力の弱くなった母でも、負担になりません。


グリップはT字型で、上から手のひらを乗せて体重をかけられる形です。握力が弱くても支えやすいのが、高齢者に向いているポイントです。
「アンチショック」の名前のとおり、中にバネが入っていて、地面を突いたときの衝撃を吸収してくれます。手首への負担がやわらぐので、長く歩く日も安心です。


長さの調節も簡単で、母の身長に合わせてすぐにセットできました杖の長さの目安は「身長÷2+3cm」と言われています。例えば身長150cmなら、78cmくらいが目安です。
先端には、山道用の石突きにかぶせるゴムキャップ(ポイントプロテクター)が最初から付属しています。街で使うときは、これを付けたままでOKです。


嫌がる母が杖を使ってくれた方法
ここが、一番お伝えしたいところです。
「どれがいい?」「お母さんが選んで」と聞いても、母が自分から杖を選ぶことは、絶対にないだろうと思いました。
だから、私が選んで、買って、実家に置いてきました。
「使って」とは言いませんでした。ただ、目につく場所に置いておいただけです。
すると——最初は手に取らなかった母が、困ったときには使うようになりました。
嫌がる親に杖を使ってもらうコツ
- 「どれがいい?」と選ばせない(選べません)
- 家族が選んで、買ってしまう
- 「使って」と言わず、目につく場所にそっと置いておく
- 使うか使わないかは、本人にまかせる
無理にすすめると、意地でも使ってくれません。「そこにあるから、不安なときだけ使う」という逃げ道を残してあげるのが、うちの母にはちょうどよかったようです。
帯状疱疹で車椅子に。杖が「回復の階段」になった


杖を買って1年ほどたったころ、今度は母が帯状疱疹にかかりました。意識が朦朧とする状態になり、一人暮らしはとても無理。実家から歩いて10分のわが家で、2か月ほど一緒に暮らすことになりました。
母を連れてくるとき、私は実家からあるものを一緒に持ってきました。あの杖です。
いちばんひどい時期は、杖どころではなく車椅子が必要でした。わが家の場合は、ケアマネジャーさんに相談したら月300円ほどでレンタルを手配してもらえました。借りられるかどうかは介護度や状況によって変わるので、まずは担当のケアマネジャーさんに相談してみてください。
体調が戻ってくると、母は車椅子を卒業して、そばに置いてあった杖につかまって歩くようになりました。やがて杖も手放し、また実家で一人で暮らせるまでに回復しました。
車椅子 → 杖 → 杖なし。
振り返ると、あの杖は母が自分の足を取り戻していく「回復の階段」の一段になっていました。買って置いておいた杖が本当に活躍したのは、想定していた「骨折の後」ではなく、思いもしなかった病気のときだったのです。
介護3年で学んだこと|道具は「必要になる前」にそばに置く
母をゆるく介護するようになって3年近く。はっきり分かったことがあります。
介護の道具が必要になるのは、いつも「とっさのとき」です。
転んだ、熱が出た、今日は歩けそうにない——そう思ってからネットで注文しても、届くのは2〜3日後。肝心の「使いたいとき」には間に合いません。
だから、杖のようにかさばらない道具は、必要になる前に買って、そばに置いておくのがベストだと思っています。
わが家の使い分け
- 杖などの小物 → 買って備える(とっさのときに間に合うように)
- 車椅子など大物・出番が少ないもの → レンタル(ケアマネジャーさんに相談)
今、杖の出番は年に1回、胃カメラ検査の帰りに使うくらいです。ふだんはあまり使わないので、3年たった今もきれいなまま。でも、それでいいんです。この杖の仕事は「不安な日に、そこにあること」だからです。
モンベルの杖と介護用の杖の比較
| モンベル Tグリップ | 一般的な介護用T字杖 | |
| 価格 | ¥7,800 | ¥2,000〜5,000 |
| 重さ | 223g | 250〜300g前後 |
| 見た目 | スポーティー | 介護用品らしい |
| 買える場所 | モンベル店舗・公式通販 | 介護用品店・ホームセンター |
価格は介護用の杖より高めです。それでも私がモンベルをおすすめするのは、「使ってもらえなければ、安い杖も高い杖も意味がない」からです。見た目の若々しさは、杖を嫌がる親にとって、何よりの機能だと思います。
※本格的に体重を支える必要がある方や、麻痺などがある方は、福祉用具の専門店やケアマネジャーさんに相談してください。モンベルの杖が向いているのは、うちの母のように「念のための支えがほしい」段階の方です。
どこで買う?モンベルは公式のみの販売です
Tグリップ アンチショックは、モンベルの直営店と公式オンラインストアでの販売です。楽天やAmazonで見かけるものは転売品のことが多く、割高な場合があるので注意してください。
初めての1本は、できればモンベルの店舗がおすすめです。実際に握って、長さを合わせて、店員さんに相談できます。私のように「タウンで使える杖を」と伝えれば、ぴったりのものを案内してくれます。
近くにモンベルのお店がない方へ|通販で買える軽い杖
| モンベル Tグリップ | はなめぶく 一本杖(伸縮) | |
| 価格 | ¥7,800 | ¥3,280(色・店舗差あり) |
| 重さ | 223g | 280g |
| 調節範囲 | 80〜100cm | 64〜88cm(対応身長130〜172cm) |
| 見た目 | スポーティー | ワインレッド |
「モンベルの店舗が遠い」「通販ですぐ届くものがいい」という方は、モンベルと同じ条件——軽い・長さ調節ができる・見た目に介護感がない——で探すと、通販でも候補が見つかります。
よくある質問
- 杖は介護保険でレンタルできますか?
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一般的に、一本杖(T字杖)は介護保険の貸与対象外です(多点杖や松葉杖などは対象)。「買うか借りるか」で迷ったら、担当のケアマネジャーさんに相談するのがいちばん確実です。
- トレッキングポールと杖はどう違うの?
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Tグリップはもともと山歩き用のポールですが、T字型のグリップは上から体重をかけられる形なので、街での支えにも使えます。先端のゴムキャップ(付属)を付けたまま使ってください。
- 母の日や誕生日のプレゼントにもいい?
-
はい。「選ばせずに贈る」作戦と相性ぴったりです。70代・80代の親へのプレゼント選びは、こちらの記事もどうぞ。


まとめ|「それは失礼しました」
先日、母がこう言いました。



そろそろ、いい杖を買おうかなぁ



いやいや、お母さん
その杖、モンベルのやつやで
高いし、高性能やで!



ああ、そうなの?それは失礼しました
3年間そばに置いていた杖が「高くて高性能な杖」だと、母は知らなかったのです。
「いいもの」に見えない——それこそが、杖を嫌がる母が使ってくれた理由なのだと思います。
- 杖を嫌がる親には、選ばせず、買って、置いておく
- 介護の道具は「必要と思ったとき、すぐそばにある」ことがいちばん大事
- モンベルのTグリップ アンチショックは軽くて、見た目に「介護感」がない
- 先端のゴムキャップは付属。買ってすぐ街で使えます
「杖なんて使わない」と言われて諦めてしまうのは、もったいないです。玄関にそっと1本、置いてみてください。使うかどうかは、親にまかせて。



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